イメージの理論(改訂版シラバス)

《イメージの理論》
【授業方針・テーマ】
前期講義「美術史の方法論」で紹介した伝統的なアプローチ以後の、比較的「新しい」方法論としてのイメージ分析を中心に扱う。
「イメージ」という言葉は多義的だが、ここではおおまかに「眼に映る像」や「意識に浮かぶ像(心像)」ととらえておきたい。つまり、視覚的に把握できる、ないしは視覚的なものとして再現される像一般である(それは実体をもつことも、幻影のようなものである場合もある)。
絵画や彫像、写真のような静止した視覚芸術ばかりではなく、運動性や時間性を含んだイメージ、また「芸術作品」とは見なされないような日常的な映像(広告、報道、TVやインターネット上の諸イメージなど)、また記憶の想起や心理的なフラッシュ・バックによる心的イメージなども視野に入れ、「視覚的なもの」の対立項として「盲目性」や「通常の視覚性を超える何か」も取り上げたい。
具体的な「イメージ」に立脚しつつ、上記のような「イメージ」を思考するための基礎的な道具・装置として、どのような理論があるのか、またありうるのかを提示する。具体的な固有名詞としては、デリダやドゥルーズ、ディディ=ユベルマン、ストイキツァらの「イメージを分析するための理論」を紹介する予定である。

【習得できる知識・能力や授業の目的・到達目標】
表象文化論、視覚文化論、イメージ分析と称されている領野での、基礎的な理論、概念、固有名詞と文献をおさえ、理解する。学生自身が分析・考察・研究を行なう際の基盤や補助線になるような知識体系を身につける。

【授業計画・内容】
1)講義ガイダンス
2)新しい美術史学の動向Ⅰ
3)新しい美術史学の動向Ⅱ
4)透視図法と空間表象(パノフスキー『〈象徴形式〉としての遠近法』)
5)フレーミングと額縁(デリダ『絵画における真理』)
6)メタ・イメージと自己言及的イメージ(ストイキツァ『絵画の自意識』)
7)モンタージュされたイメージ(ピラネージ、アビ・ヴァールブルク、エイゼンシュテイン、ゴダールなどの紹介)
8)モンタージュとアナクロニスム(ディディ=ユベルマン『イメージの前で』)
9)痕跡としてのイメージ(クラウス『オリジナリティと反復 ロザリンド・クラウス美術評論集』)
10)イメージと触覚性(視覚における触覚的なもの/「イメージに触れる」試み)
11-12)動画(moving image)についての理論1(ドゥルーズ『シネマ1 運動イメージ』、『シネマ2 時間イメージ』)
13)動画(moving image)についての理論2:アニメーションについて(ラマール『アニメ・マシーン』)
14)盲目性について(デリダ『盲者の記憶 自画像およびその他の廃墟』)
15)期末試験と解説

【テキスト・参考書等】
ほぼ毎回、基礎的文献ひとつを「課題文献」に指定するので、事前に一読しておくこと(「課題文献」はPDFをDropboxで共有する予定)。その他参考文献については、毎回の講義時に適宜指示する。
なお、方法論の概観や、視覚的なイメージについて思考する際に「そもそもなにが問題となるのか」を体系的に論じた教科書的文献として、下記の2冊がお勧めできる。
・ジョン・A.ウォーカー、サラ・チャップリン『ヴィジュアル・カルチャー入門』岸文和他訳、晃洋書房、2001年。
・J.-C. フォザ他『イメージ・リテラシー工場 フランスの新しい美術鑑賞法』犬伏雅一他訳、フィルムアート社、2006年。

【成績評価方法】
出席およびレスポンス・カード(講義に対する意見やコメント、関連して考えたこと、疑問点などを簡潔に書く、白紙提出不可)の提出が30%、中間レポート30%、期末試験40%の割合で算出する。
中間レポートの締切・要件、期末試験の形式や出題形式については、講義時に指示する。
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